入管法改正の国会審議が続く中、
外国人技能実習制度への批判の声が大きくなっています。
しかし、おそらく廃止となることはないでしょう。
その根本的な理由を、以下に3つ列挙してみます。
①地方へ外国人労働者を一定期間縛る制度は他にない。
出稼ぎがほとんどの外国人労働者にとって、
高賃金先への就労が最優先条件です。
最賃を見比べてみても、
どう考えても東京へ一極集中です。
特定技能の受入が進んでも、転職の自由がある限り、
ほとんどの外国人労働者は東京へと転職していきます。
地方こそ疲弊していて、
地方にこそ外国人労働者が来て助けて欲しいのに、
外国人技能実習制度を廃止すると、
地方へ縛り付けることは現実的にほぼ不可能になります。
もちろん、100人中100人全員とは言いませんが、
外国人労働者にとって、コストをかけて招聘してくれた恩など、
関係ありません。
だって、誰も自身の人生に安心や保証をしてくれるわけではないのですから。
地方の選挙区から出て来る政治家がほとんどである以上、
選挙区の声を国会に届け、支援者からの期待に応えなくてはならないので、
違う代替案が登場するまでは、
どれだけ国際批判を浴びようとも、
外国人技能実習制度を無くすことはできません。
②外国人技能実習法と外国人技能実習機構を否定できない。
政治家や官僚は、自身が制定した法や、
天下り先となる独立行政法人を廃止することはできません。
あぁ、政権交代などあれば別です。
でも、そうでもない限り、
自身の実績を否定することは、自身のキャリアに傷をつけることになり、
到底納得できるハズもありません。
実際の機能には、物足りなさを感じてなりませんが、
取り締まり、摘発、処罰が進み、
公表が進めば、
ある程度の正常化、健全化に寄与している実績とされ、
肯定論も浸透し始めるかもしれません。
まだまだこれからの見通しでもありますが、
十分に機能していけば、現実的には、
確かに問題は減少することでしょう。
③特定技能希望者の一定数確保の分母要因であるから。
*ここはちょっとわかりにくいかもしれませんが、
なるべくわかりやすく書いてみます。
今回の特定技能の受入開始は、従来の諸問題をコントロールするために、
受入に制限をかけていく考え方は、絶対変わりません。
そして、それは業種ごとに、
「指導する(実習制度)」、「能力を活かす(特定技能)」という違いこそあれど、
業種ごとに技能検定で能力を計って、受入をしていく流れです。
それは、
特定技能の受入要件上、
対象職種の技能検定受験と合格が必須ですので、
技能実習制度の修了者でもない限り、
現地で、ど新規の希望者がいるとすれば、
現地でその対象職種の技能検定合格までを、
指導教育する仕組みを築けるところから送り出してもらう必要があるとなります。
加えて、
日本語検定でN4相当も必要となると、
ど新人の日本への出稼ぎ希望労働者は、
現在の介護同様、他の手法での出稼ぎのほうが、
よほど早く、出稼ぎに行けるため、
特定技能への希望者は、少なくともど新人ではほぼ皆無となります。
出稼ぎへのハードルが、特定技能よりもまだ低い技能実習制度を
ど新人の開国人労働者が選択するのは当然です。
この現実から考えると、
いざ特定技能枠を国会審議までして設けたワリに、
受入が100名、1000名なんてことになれば、
いわゆる人手不足対策としての外国人労働者受け入れ策が
十分に機能していないとなり、
それはそれで、
政治家支援する地元の有権者(企業経営者)から、
苦情が出ることでしょう。
つまり、
そもそもの特定技能への出稼ぎ希望者をそれなりに確保するためには、
技能実習制度での受入という背景分母があって、
初めて特定技能の受入が増やせるという現実があると考えられます。
もちろん、
大企業の現地でのカスタマイズ事前研修対応などが可能な先だけに
特定技能受入を認めていく流れであればともかくも。
特定技能が認められていく業種は、
ほぼほぼ技能実習制度での移行対象職種となっています。
宿泊などは現時点ではなっていませんが、
まず間違いなく技能実習制度でも対象職種となります。
現実論としても、
技能実習の延長線上での受入が望ましいと考えられます。
特に地方の中小企業での特定技能受入の活用を考える場合、
技能実習で3年働いて企業側と実習生側との相性確認と、
人間関係を構築したうえで、
特定技能受入の手配をかける流れがもっとも自然で受入しやすいからです。
転職リスクはありますが、
最悪転職されても納得いく人財だと承知しての受入手配が可能であり、
元実習生側も、この企業だったなら、東京へトライしてみるよりも、
ここでまた働きたいと思ってくれる場合、
実習制度の縛りが無くなっても、定着化を図れる可能性が高いから。
逆を言えば、
おそらく、技能実習をすっ飛ばしての特定技能での受入は、
企業側がちゃんと適切な受入対応ができず、
人財側とはビジネスライクな労使関係となり、
特に地方では定着化は難しいと思われます。
だって、東京へ転職していけるのですから。
以上、3つの理由を上げてみました。
いかがでしょうか。
よって、技能実習制度はなくなることはないと確信しています。
が、
時代の変化は激しく早く、
法やルールの定まりを待っていてはくれないほどに、
AIやICT、ロボットなどの技術革新のスピードはすさまじく、
特に各外国側の事情もあるため、
どう転がっていくのかは読みきれません。
ただただ言えるのは、
否応なしの人手不足に汲々としているのは確かだし、
他国がどうであれ、日本の事情としては、
外国人労働者に助けてもらわねばならないとかじを切っていますので、
どう転がっていこうが、
外国人労働者は入ってきますし、
人財と企業の双方を支援する業務需要は増えこそすれ減ることはないでしょう。
であれば、
技能実習法や、外国人技能実習機構までできているほどに、
外国人労働者の受け入れ手法が現実と法ともども歴史的実績や経験値のある
ある意味、確立された受入手法は、
今後の特定技能などでもかなりの部分が踏襲されるでしょう。
ということは、
余計に技能実習制度での受入手法は、
基礎となり、他の受入手法への応用が利くようになります。
特定技能をはじめとした外国人労働者の受入については、
廃止を恐れて技能実習制度から遠ざかるよりは、
むしろ今からでも、外国人技能実習制度での受入を経験すべきです。
これだけ書いていても、実は、
別に技能実習制度に固執しているつもりもありません。
もっと良い受入手法が確立されるのであれば、
どんどん変化に対応していくべきだとも思っています。
ですが、
法であるがゆえに、
そう簡単に変わることもないし、
また、技能実習制度事業を通して学び気づくことは
かなりたくさんある良い制度だとも思っていますので、
当事者として業界の健全化を図りながらも、
制度事業を通じて、引き続き成長を図っていきたいと思っています。
PS.
特定技能は転職が可能となっていますが、
現実的にどこまで可能かは、まだわかりません。
なぜならば、
当初の地方の会社がAさん、Bさんを特定技能として受け入れしたとしますが、
その会社ではAさんとBさんを選んで受入しましたが、
その後、東京への転職を希望するAさん、Bさんを、
東京で受入したいと言ってくれる先があるかどうかは、
何とも言えないからです。
同じ業種であっても、
欲しい人財のタイプは決して同じではないということですね。
率直に言って、
単なる労働力として、おとなしく従順な穏やかな人格を好む先もあれば、
積極的にアレコレ貪欲に仕事を覚え、
昇給を望むほど意欲的な人財を求める会社もあるでしょう。
従事できる職種の幅にもよりますが、
例えば、溶接一つとっても、アレもコレも応用が利く人財を求めている先もあれば、
手溶接の同じ作業だけをお願いしたい会社もあるでしょう。
機械じゃなく、人なので、
上司や同僚との相性もあります。
転職受入検討先にすれば、
人財が日本に居れば余計に、面接や実際に業務をさせてみて、
手つきを確認もしたいことでしょう。
現実的なハードルを考えると、
地方で特定技能受入をしても、
100%東京へ転職されてしまうとは限らないのかもしれません。
よって、転職が非現実的であるという現実が確認されるのであれば、
技能実習制度は不要となるやもしれません。
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