たまには現場でのエピソードをお伝えしてみます。
ある会社で受入中の外国人技能実習生が、
体調不良で通院を希望。
結論から言えば、
細菌によるものではなく、体質的な炎症であり、
抗生物質などで治まるものではないという診断で、
ちょっと厄介な状態になりました。
表面的な問題を言えば、
トイレが近いってことです。
コレ、病気というものではないのですが、
なんせ普通の人よりチョコチョコトイレに行きたくなる。
会社の人や日本人に言わせれば、
『そんなのしょうがないんだから、「スミマセン、ちょっとトイレ行ってきていいですか?」って聞けばいいじゃん』
という回答。
本人にしてみれば、
さすがに毎回毎回だと恥ずかしい。
お医者さんも効く薬を探そうと言いつつ、
その病院で処方できる薬が限られているのか、
(地方の田舎だからなのかもだけど、そんなことある?)
結局、同じ薬を処方し続けるだけ。
本人も色々悩んでいたし、
母国の病院よりも、日本の病院よりはと様子は見ていたものの、
どうにも好転せず、しまいには母国から母国の薬もどうやってか送ってもらい、
精神的に少し安定したものの、
やっぱり症状は好転しない。
結果、
技能実習をやめて、帰国したいというリクエストがありました。
どこの国かは伏せておきますが、
業界の長い方であれば、
『あ、コレは本人が決断したことだから、すぐにエアチケットを自分ででも取って帰るな…』
と想定されることでしょう。
よって、
『ちょっと待ちなさい』
と、すかさず指示します。
ココで気づかず対応が遅れると、もう止まりません・・・①
アナタの都合だけで世の中、動いてはいない。
同僚にも、会社にも、日本の法律的にも、
母国の法律的にも、様々整理が必要だ。
帰るなとは言っていない。
不幸中の幸いで、アナタも今すぐ帰らないとマズいほどの緊急性はない。
子供じゃないんだから、
大人として、ちゃんと周りのことも考えなさい。
そんなの関係ないとワガママを無理やり通して迷惑をまき散らして帰ると、
後でアナタが困ったことになる。
ちょっと待ちなさい。
私が、全て交通整理をしてあげるから…
のようなことを伝えます。
案の定、
スミマセン、言われなければすぐにエアチケットを取るところでした。
アナタの指示に従います。
宜しくお願いします。
とのこと。・・・②
取り急ぎ、会社と組合と送り出しと連絡を取り、
アレコレと状況せつみと対応策を連絡。
この時点での様々な裏を取ります。
その後、1,2日後に、会社の決定権者の方同席の上、彼にも会います。
帰るのは構わない。
アナタの健康は、アナタ自身で管理し守らねばならない。
私たちは無理やりアナタを契約で縛っているからと、
引き留めるコトはない。
それは、致し方のないコト。
でも、現時点で帰ると、技能実習の修了証は出ない。
(ちょうど3年目の技能検定前だったこともあり)
2回目の検定も受けられないから、
1回目の検定合格分しかキャリアは積めない。
3年を全うすれば、3号という資格も得られるし、
特定技能という選択肢もできてくる。
これらは、帰国後、しばらくした後でも、
同じ分野ならば会社はどこでもよくて、試験ナシで日本で働くことができる権利。
もちろん、日本での技能実習を3年修了したというキャリアもついてくる。
だけど、今、ココで終わって帰るだけであれば、
それは資格を得られることはない。
そこだけは、ちゃんと理解しておいてほしい。
それが日本側のルールだから。
それと、帰るならば、途中帰国の理由を直筆で書いてもらわねばならないので、
少し時間が欲しい。
でも、2,3日程度では手続きを終わらせられるように対処する。
会社側にも了承は得ている。
手続きを進めて良いか?
ちなみに、もしアナタが一時帰国として、
母国で約1カ月程度通院治療に当たってみて、
体調が好転したり、効く薬などの手配が可能であったりしたならば、
また、その回復状況を見て、改めて戻ってきて、
最後まで雇用契約を全うする気があるのならば、
会社もそれは認めてくれると話し合いをしてある。
会社側は今回の帰国は致し方のないコトなので、
このケースに限っては、許容してくれる。
アナタの考えは?・・・③
もし、それが可能ならば、日本へ戻ってきて、
最後まで実習を全うしたい。
私の問題は、仕事がイヤとか、会社(同僚や指導員)がイヤとか、
給料がどうとかいう話ではない。
ただただ、自分の体が心配なだけだから、
もし問題なかったならば、日本へ戻ってきたいです。
という返答。
であればと、会社側も本人の直接的な言葉と意思を確認し、
その線で進めていこうと、改めて許容を表明。
彼は途中帰国改め一時帰国へ。
その後も、彼の方から連絡が都度都度届き、
状況を報告してくると同時に、
いつまでには日本へ戻る予定など、
再度意思表示をしてきます。
ここでもキチンとコミュニケーションを丁寧に取ります。・・・④
結果、彼はエアチケットを取る段階にまで無事辿り着き、
実際に日本へ帰ってきて、
技能実習に戻りました。
誰もが笑顔です。
母国にいる彼の家族も安心しています。
あえて、ナンバリングした①~④が、
個人的にはポイントです。
①この時点でエアチケットを取っていたら、
もう彼の心は何をどう言っても、終わって帰る。。。
この結論以外は何もありません。
結果、後始末に終わって良し。
誰も何も得をするどころか、損をして終わります。
こういう場合は、即対応することが肝心です。
②こちらの指示を聞かせるコト。
コレは、技能実習生から一定以上の安心と信頼を勝ち得ていなければ、
きちんと人間関係を築き、グリップできていなければ、
ちゃんと言うコトを聞かせられません=指導に従わせられません。
寄り添うとは、甘やかすことではなく、一目置かせることも必要です。
そして、それらは、聞かせるのではなく、相手から自発的に頼りにされてしまう状態が必要です。
かといって、何でもかんでも甘えは聞いてあげることとは違うって意味です。
コレができないと、ハンドリングはできません。
ココに至るまでに、様々な話をして指導してきたことを通して、
この人は本当に自分のことを考えてくれている、
この人のことは裏切らない方が、自分にとって得。
いや、ここまでしてくれる人を裏切ったら、自分の沽券にかかわる。
そう思わせるトークが必要だってことです。
③当然ながら、受け入れる会社側もキチンとグリップできていないといけません。
会社にとっては何が得か、会社側の最高の希望は何なのか、なんであるべきなのか。
少しイヤラシイ言い方をすれば、上手に誘導しなければなりません。
今回の場合は、会社にとって実は帰したかったほどの悪い技能実習生でなければ、
当初の予定通り、3年全うしてもらったうえで、コスパを成立させられることの方が、
よほどメリットがあるし、帰責性こそないものの、
途中で技能実習生を帰したことに対して、
痛くもない腹を探られる可能性も高まるのかもしれない...
④当初より、この段階まで来ても、
会社側には、本人は本当に日本へ戻ってくるのかはわからないとしています。
そして、ただ単に事務的なやり取りをしているのではなく、
体調は回復しているのか。
奥さんや子供にあえて喜んでいるだろうから、ゆっくり過ごしなさいとか、
宜しく伝えてくださいとか、
アナタの体調管理がイチバン大事だから、無理に日本へ戻らなくても大丈夫とか、
相手を気遣う言葉を逐次かけて、安心させてあげるコトも大事です。
(グリップできているからであって、もしできていなかったならば、
逆効果になり、つけあがる場合もあるので、あくまで人を見てかける言葉は判断すべきです)
また、会社の人たちも心配しているし、
アナタが戻ってくることを心から待ってるよと、
例え嘘でもオーバートークでも、そう声をかけてあげるコトはとても大切だと思います。
ある程度具体的に書いてみましたが、
いかがお感じになりますか?
一つ言えるのは、
コレらを丁寧にできていないと、
会社側は3年全うできずにコスパは成立しない。
家賃などもバランスがおかしくなる。
水道光熱費なども同じ。
残っている別の技能実習生も会社や組合の対応の如何を見ている。
機構や入管の目につきやすい要因をつくるコトにもなりかねない。
(最後は少々オーバートーク💛苦笑)
組合も送り出しも、入ってくるはずの監理費や管理費が、
入ってこなくなる。
=見込んだ利益が得られなくなる。
本人にとっては言うまでもない。
win4allならぬ、win4loseにもなりかねない。
判断と立ち回りさえ、適宜、適正かつ適切にできれば、
それを実現させるコミュニケーション能力があれば、
トラブルは乗り越えられる。
乗り越えられるトラブルはある。
コレらを、単価×人数でカネ計算しているマネーゲーマーは、
歩留まり的なマスの考え方をして、
一人で何十人、何百人もみているんだから、手のひらから零れ落ちる者は致し方ないとします。
逆に、一人一人を、歴史と背景と家族のいる一人の人間として、
ちゃんと見ている場合、
人生や社会の先輩として、ナニジン問わず、ちゃんと向き合って対応できる場合、
一つ一つの事例に対して、キチンと丁寧に関わり、最後まで責任もって面倒を見ます。
受け入れる側の人にすれば、
実際にお世話になる人にすれば、
どちらがいいのでしょうか。
言うまでもありませんね。
ちゃんとしてれば、会社側の人は、
なによりも、この人に任せておけばたいていは安心だと、
信頼を勝ち得ることになります。
フツーにきちんと色々なことを考えて、対処に立ち回っただけなのに…。
今後も何かあれば、すぐに相談してくることになるでしょう。
(失礼ながら、実習生のグリップと理屈は同じです)
後々の紹介にも関わってきます。
この人ならば、自慢できるくらいに自信もって紹介できる、
むしろアナタのところも、この人に対応してもらえば良いんじゃないとか。苦笑
存外、そんなものなのかもしれません。
別にコレ、監理団体の現場対応の職員のことだけ言ってるワケじゃありません。
受け入れる会社側だって、
送り出し側だって、
全く同じ理屈です。
受け入れる会社側は、色々な考えを巡らせて、
監理団体職員と協議すれば良いでしょうし、
送り出し側だって、本人と直接話を様々して、
監理団体の担当職員とも協議してフォローしてあげれば良いでしょうし、
要は、ポジション関係なく、その人次第だってこと。
アナタはいかがですか?
いざ、アナタが今回のこんなケースに直面した場合、
(今回、あくまで出来高結果論でしたが)
無事に途中帰国を一時帰国へと上手に誘導できますか?
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